梅毒の検査について
執筆者:日本性感染症学会認定医 内田千秋
梅毒は、「梅毒トレポネーマ菌」が体内に侵入したことによる感染症で、主に性行為(類似行為含む)によって感染する性病です。梅毒は、梅毒トレポネーマ菌が体内に侵入したことによる感染症で、主に性行為(類似行為含む)によって感染する性病です。
梅毒に感染すると、体内でリン脂質の一種である「カルジオリピン」に対する抗体が生成されます。
梅毒の検査とは、このカルジオリピンに対する抗体を測定する脂質抗体検査を差し、定性検査と定量検査があります。一般的に定性検査は梅毒感染のスクリーニング、定量検査は治療効果の判定などに用いられています。
【検査の種類】
梅毒血清反応は、カルジオリピンを抗原に用いる方法と、トレポネーマ(TP)に対する特異的抗体を測定する、TP抗体検査法を組み合わせて総合的に判断していきます。
血清抗体は感染後、初めにカルジオリピンに対する抗体量(RPR値)が上昇し、次にトレポネーマに対する特異的抗体価(FTA-ABS、TPHA)が上昇するというのが通説でしたが、最近はTPHAの検査精度が上がり、はじめにTPHAの抗体価が上昇することもあります。RPR値は治療に反応して数値が変動するため、治療効果の判定に適しています。
しかし、梅毒以外の要因で反応する「生物学的偽陽性」が起こり得ます。一方で、トレポネーマ抗体測定の特異性は高いですが、治療後に抗体価は減っていくものの、一度陽性になると基本的に一生陰性化することがないため、梅毒の活動性や治療効果を判定するものには適していません。
【あおぞら研究所での検査】
あおぞら研究所での梅毒検査はECLIA法で行っており、TPHAの検査をしています。この検査で陽性反応があった場合はRPR法も同時に行います。
この検査は定性検査の為、陽性の場合は医療機関で定量検査をする必要があります。
【ウインドウピリオドについて】
梅毒は体内の抗体を調べる検査ですが、これを検出できるようになるまでの期間を「ウインドウピリオド(ウインドウ期)」と言います。
梅毒に感染した場合、感染機会からRPR値は約3週間〜4週間程度、TP抗体は約1〜2ヶ月程度経過すると検出出来るようになります。
つまり、感染機会から日が浅い段階で検査を受けた場合は、実際に感染していても陰性となる可能性があります。
【どんな時に検査を受けたら良いか】
梅毒の主な感染経路は性行為、母子感染、注射器の使い回しなどです。 梅毒は感染力が強く、膣性交以外でもキスやオーラルセックス、アナルセックスなどで感染するとされています。コンドームを用いない性行為や、よく知らない相手と性的接触をもってしまったなど、不安な行為があった場合にはいつでも検査を検討されると良いと思います。
一般的に、症状が出てから検査を受ける方が多いようですが、症状が出なくても感染していることがあるため、症状だけで判断するのは危険です。感染力は強いですが、きちんと治療をすれば完治出来る病気です。
不安な行為があった場合は、前述のウインドウピリオドを考慮し、なるべく早い段階で検査を受けて、早期発見や感染拡大防止につなげていきましょう。
【検査を受診できる機関】
全国の多くの保健所で梅毒の検査を行っています。
匿名・無料で受けることができますが、検査を受けられる日が固定されていたり、結果が出るまでに1週間程度かかる場合があります。
また多くの保健所では定性検査を実施のみを実施しており、それだけでは詳細な数値がわからないことや、検査法によっては偽陽性が出ることがあります。そこで陽性反応があった場合には別途医療機関を受診し、定量検査や治療を行う必要があります。
保険適用の医療機関を受診した場合は、検査結果がわかるまでに日数がかかったり、治療履歴が家族や会社に知られる可能性があります。
一方、自由診療を行っているクリニックでは、好きな日に検査を受けたり、最短でその日のうちに結果が判明するなどのメリットがあります。
保険証を使わないので、検査や治療をしていることを周りに知られずに済むため、近年利用者が増えているそうです。
また、近くにそういった医療機関がない場合は、あおぞら研究所のように郵送キットで検査の第一歩を踏み出す方も多いようです。
また、梅毒の裏にはHIVが潜んでいるとも言われています。HIVは、梅毒と比較すると感染力は弱いとされていますが、感染して放置してしまうと非常に怖い病気です。
HIVのウインドウピリオドも梅毒と同じくらいの時期なので、検査を受ける際は一緒に調べるようにしましょう。(HIVは感染機会から3ヶ月、梅毒は2ヶ月経過して陰性であれば、陰性が確定します。)