B型肝炎・C型肝炎について
B型肝炎とは
B型肝炎ウイルス(HBV)が、血液や体液を介して感染する肝臓の病気です。HBVは、感染した時期や健康状態によって、一時的な感染に終わるもの(一過性感染)と、ほぼ生涯にわたり感染が継続するもの(持続感染)とに大別されます。
現在、国内のHBV感染者数は、110万~140万人といわれていますが、そのほとんどが母子感染(垂直感染)によるものです。 以前は輸血による感染もありましたが、1972年にHBs抗原検査が開始されてからは、輸血によるHBV感染者数は減少しており、現在ではその危険性はほとんどありません。
我が国の成人における急性B型肝炎の多くは、性感染によるものと考えられています。しかし、性行為によって感染した急性B型肝炎の実数、感染率等については、明らかになっていません。
C型肝炎とは
C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することにより起こる肝臓の病気です。HCVに感染すると約70%の人が、生涯にわたり感染が継続する持続感染者となります。
放っておくと慢性肝炎、肝硬変、肝がんと進行する場合があるので注意が必要です。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれますが、それは臓器の持つ予備能力が高いために、自覚症状がないまま病気が進むことがあるからです。
症状がない場合も定期的に検査をして、必要なら治療を含めて対処を検討しなければなりません。現在、世界全体で1億7000万人、日本では約100万人程度のHCV感染者がいると考えられています。その中には、感染に気づかない人や通院していない人が多く含まれています。
慢性肝炎、肝硬変、肝がん患者の60%がHCV感染者であり、年間3万人の方が肝がんにより亡くなっています。
患者数の推移
B型肝炎・C型肝炎の平成11年~令和3年の年別報告数の推移をグラフにしたものです。
B型肝炎は平成22年まで減少傾向でしたが、この年を境に少しずつ増加が見られるようになってきました。
年齢別に見ると、男性・女性ともに25〜29歳にピークが見られ、感染経路は、性的接触が約7割を占めています。
一方、C型肝炎は平成20年以降、ほぼ横ばいです。
年齢別に見ると、40代以上に多く、感染経路は医療現場での針刺し事故等や、静脈薬物使用、医療現場以外での針等の刺入(刺青など)が主ですが、割合は少ないながらも性的接触での感染も報告されています。
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感染経路
感染経路は、垂直感染と水平感染の2種類に分けることができます。
垂直感染:出生時の母子感染。感染している母親から妊娠中に子宮内、産道で子に感染すること。
水平感染:性行為、不衛生な器具を使用しての医療行為、入れ墨、出血を伴う民間療法などで感染すること
潜伏期間
B型肝炎の潜伏期間
急性肝炎 感染してから1~6ヶ月の潜伏期間を経て、倦怠感や食欲不振、悪心、嘔吐のほか、濃いウーロン茶のような褐色尿が出る、目の白い部分(眼球結膜)が黄色くなって、その後皮膚も黄色みを帯びてくる黄疸などの症状が出現します。
中には、激しい炎症による肝不全、いわゆる劇症肝炎を起こすこともありますので、このような症状があれば、速やかに医療機関を受診することが必要です。
慢性肝炎 出生時や乳幼児期にHBV感染をした場合、持続感染に移行します。 生後数年~十数年間は肝炎の発症がなく、感染したHBVは排除されずに体内で共存しています。この状態を無症候性キャリア(症状がなくても他人に感染させうる状態)と言います。
思春期を過ぎると自己の免疫力が発達し、異物(病原物質)であると認識できるようになります。白血球(リンパ球)がHBVを体内から排除しようと攻撃を始めますが、この時リンパ球が、HBVに感染した肝細胞も一緒に壊してしまうので、肝炎が起こり始めます。
一般的には、10~30才代の頃に一過性の強い肝炎を起こします。 しかし、それ以降のHBVは増殖性の高いウイルスから、時間と共に比較的おとなしいウイルスに変化し、その後の多くは、そのまま生涯にわたって強い肝炎を発症しません。 (この状態の患者を、非活動性キャリアと言います)
このように思春期以降、一過性の肝炎を起こした後、そのまま一生、肝機能が安定したままの人がおよそ80~90%です。
残りの10~20%の人は慢性肝炎へと移行し、その中から肝硬変、肝がんになる人も出てきます。
C型肝炎の潜伏期間
HCVは、血液を介して感染し、2~14週間の潜伏期間を経て急性肝炎を起こすことがあります。ただし、急性肝炎を起こすことは比較的まれで、多くは感染しても自覚症状がない不顕性感染です。
また、60~80%の人では、ウイルスが自然に排除されることなく慢性化し、慢性肝炎になると言われています。C型肝炎は、慢性肝炎の段階ではほとんどの場合、自覚症状がありません。 慢性肝炎の患者さんのうち30~40%の方が、約20年の経過で肝硬変に進行します。
さらに肝硬変の患者さんでは、年率約7%の頻度で肝がんが合併すると言われています。また、 肝硬変は食道静脈瘤を合併することも多く、破裂すると命にかかわることもあります。
少しでも気になることがあれば、早めに検査を受けるようにしてください。