トリコモナスの検査について
執筆者:日本性感染症学会認定医 内田千秋
トリコモナスとは、「トリコモナス原虫」が、性器に入り込んで炎症を起こす性感染症です。
男性と女性で寄生する場所が異なり、男性の場合は尿道や膀胱、前立腺や精巣です。女性の場合は膣内や子宮頸管、尿道や膀胱に寄生します。
最近の傾向として、各国地域による感染率の差が大きいと言われていますが、日本は減少傾向にあります。しかし、感染者の中には再発を繰り返す難治症例も少なくないといわれています。
感染経路は性行為だけでなく、下着やタオル、バスルームなどでも感染することがあるため、注意が必要です。
男性に感染すると尿道炎などの症状を起こしますが、ほとんどの場合は自覚症状がありません。女性に感染すると膣や膀胱に炎症が起こり、泡状で悪臭を伴うおりものや、外陰部が熱くヒリヒリするなどの症状が現れます。
女性の場合、20~50%が無症状とも言われており、治療せずに放っておくと炎症が卵管まで移行し、不妊症や早産、流産につながる可能性があります。
【検査の種類】
男性は尿検査、女性は膣分泌液を採取して検査を行います。
・TMA法(遺伝子による核酸増幅法)
1つの細胞に1個しか無いDNAの遺伝子ではなく、数千個存在しているrRNAの遺伝子をターゲットにして検査を行います。ターゲットとなったrRNAに酵素がくっついてDNAの合成と分解を繰り返し、RNAを増幅させていく検査方法です。
・顕微鏡による目視での検査、培養検査
トリコモナスは肉眼では見えないほど小さな生き物なので、男性は尿や尿道の分泌液、女性はおりものを採取して顕微鏡で観察したり、培養検査を行います。
顕微鏡や培養の検査は、男性は女性に比べてトリコモナス原虫の検出が困難でしたが、トリコモナスTMA法の検査により検出率が上がりました。
【あおぞら研究所での検査】
現在、あおぞら研究所ではより精度の高いTMA法で検査を行っています。

【どんな時に検査を受けたら良いか】
症状がある場合はもちろん、コンドームを使わない性行為や、よく知らない相手と関係を持ってしまったなど、少しでも不安なことがあれば検査をしましょう。

【検査を受診できる機関】
症状がある場合は、男性は泌尿器科や性病科、女性は婦人科(産婦人科)や性病科で検査や治療を行うことが出来ます。
ただし、保険が適用されるかは医療機関の治療方針によって異なります。
一方、自由診療を行っているクリニックでは無症状でも検査を受けることができます。
最短でその日のうちに結果が判明したり、すぐに治療を開始出来るなどのメリットがたくさんあります。
トリコモナスを含めて、性感染症はコンドームによる予防や、病気の早期発見・早期治療が大切です。ご自身とパートナーのためにも予防と定期検査を心掛けましょう。