梅毒について
梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)という 細菌によって起こる性感染症です。 主に性的接触によって感染し、初期にはしこりや潰瘍、 リンパ節の腫れ、その後は全身の発疹などが現れることがあります。
梅毒では、一度現れた症状が自然に消えることがありますが、 症状が消えても治ったとは限りません。 感染の可能性がある場合は、症状の有無だけで判断せず、 検査で確認することが大切です。
梅毒とは
梅毒は、梅毒トレポネーマを病原体とする細菌性の性感染症です。 梅毒トレポネーマは、らせん状の形をした非常に細い細菌です。
主に、梅毒トレポネーマを含む感染性の病変と、 相手の皮膚や粘膜が直接接触することで感染します。 性器だけでなく、口やのど、肛門周囲などに感染することもあります。
梅毒では、初期に現れた症状が治療をしていなくても 自然に軽快する場合があります。 その後、症状のない時期へ移行することがあるため、 見た目だけで治癒したと判断することはできません。
梅毒の患者数の推移
日本では2010年代以降、梅毒の報告数が大きく増加しています。 厚生労働省によると、 2022年以降は年間10,000例を超える報告が続いています。
20代を中心に多く報告
女性では20代を中心に梅毒の報告が多くみられます。
幅広い年代で報告
男性では20代から50代までの幅広い年代で報告されています。
梅毒の症状
梅毒の症状は病期によって異なります。 すべての方が同じ経過をたどるわけではなく、 症状がほとんど現れない場合もあります。
梅毒の初期症状|早期顕症梅毒1期(第1期梅毒)
感染後、典型的には約3週間が経過すると、 梅毒トレポネーマが侵入した場所に 初期硬結と呼ばれる硬いしこりが 現れることがあります。
その後、しこりの中心部分が潰瘍状になったものを 硬性下疳(こうせいげかん)と呼びます。 性器や肛門周囲だけでなく、 口唇や口腔内などにできることもあります。
初期硬結
梅毒トレポネーマが侵入した場所に、 硬いしこりができることがあります。
硬性下疳
初期硬結の中心が潰瘍状になった病変です。 強い痛みを伴わないことが多いのが特徴です。
リンパ節の腫れ
性器周辺の感染では鼠径部、 口やのど周辺では首のリンパ節が腫れることがあります。
初期硬結や硬性下疳などは、 治療をしていなくても数週間で自然に軽快する場合があります。 しかし、梅毒そのものが治癒したとは限りません。
全身に症状が現れる|早期顕症梅毒2期(第2期梅毒)
1期のあと、梅毒トレポネーマが血行性に全身へ広がり、 皮膚や粘膜などに多彩な症状が現れることがあります。
梅毒性バラ疹
体幹や手足などに淡い赤色の発疹が現れます。 痛みやかゆみが目立たないこともあります。
丘疹性梅毒疹
赤みを帯びた小さな盛り上がりが、 体のさまざまな部位に現れることがあります。
梅毒性乾癬
手のひらや足の裏などに、 赤みや角質を伴った発疹が現れることがあります。
扁平コンジローマ
性器や肛門周囲などに、 平らに盛り上がった病変が現れることがあります。
梅毒性アンギーナ
のど(咽頭)に病変が生じ、 発赤や腫れなどがみられることがあります。
梅毒性脱毛
頭髪が部分的・まばらに抜け、 虫食い状にみえる脱毛が現れることがあります。
このほか、発熱、倦怠感、頭痛、関節痛、 全身のリンパ節の腫れなどを伴う場合もあります。
症状がない時期|潜伏梅毒
血液検査では梅毒の反応が確認されるものの、 症状が認められない状態を 潜伏梅毒と呼びます。
1期と2期の間や、2期の症状が消えたあとなどにみられます。 長期間症状がなくても、自然治癒したとは判断できません。
梅毒では無症状の期間が続くことがあります。 感染の可能性がある場合には検査で確認することが重要です。
晩期顕症梅毒
梅毒を治療せずに長期間経過すると、 感染から数年~数十年後に 結節性梅毒疹やゴム種(ゴム腫) などの病変が現れることがあります。
また、大動脈などの心血管系に病変が生じる場合もあります。 現在では適切な抗菌薬治療が行われるため、 晩期顕症梅毒まで進行するケースは多くありません。
神経梅毒
梅毒トレポネーマが中枢神経系に影響する状態を 神経梅毒と呼びます。
神経梅毒は梅毒を長期間放置した場合だけに起こるものではなく、 早期を含め、どの病期でも起こる可能性があります。 神経症状、眼の症状、聴覚の異常などがある場合には、 医療機関での評価が必要です。
梅毒の感染経路
梅毒は、梅毒トレポネーマを含む感染性の病変と、 相手の皮膚や粘膜が直接接触することで感染します。
膣性交
性器の皮膚・粘膜や病変部との接触によって 感染する可能性があります。
オーラルセックス
性器と口・のどが接触することで、 口腔や咽頭にも感染する可能性があります。
アナルセックス
肛門・直腸周辺の皮膚や粘膜との接触によって 感染する可能性があります。
キスなどの接触
口唇や口腔内に感染性の病変がある場合には、 キスなどの直接接触によって感染する可能性があります。
妊娠中の母体から胎盤を介して胎児へ感染することがあり、 これを先天梅毒と呼びます。
コンドームを適切に使用することで感染リスクを下げることができますが、 コンドームで覆われていない部位に感染性の病変がある場合には、 接触によって感染する可能性があります。
梅毒の潜伏期間
梅毒では、感染してから最初の症状が現れるまで、 典型的には約3週間程度です。 症状が現れる時期には個人差があります。
その後、初期硬結や硬性下疳などの1期症状が現れ、 さらに時間が経過すると、 全身の発疹などを伴う2期へ移行することがあります。
症状の現れ方や時期、経過には個人差があります。
梅毒では症状のある時期と無症状の時期があり、 一度症状が消えたあとに再び症状が現れることもあります。
梅毒が気になる場合は検査で確認を
梅毒は、症状だけで感染の有無を判断することが難しい感染症です。 性的接触のあとに感染が心配な場合や、 性器・口・肛門周囲のしこりやただれ、 リンパ節の腫れ、全身の発疹などがみられる場合には、 検査による確認を検討してください。
現在症状がある場合、 パートナーが梅毒と診断された場合、 妊娠中または妊娠の可能性がある場合などは、 医療機関へ相談することが重要です。
よくある質問
梅毒の症状が消えたら治ったということですか?
いいえ。梅毒では、治療をしていなくても症状が自然に消えることがあります。 症状が消えても感染が続いている可能性があるため、 感染の可能性がある場合は検査で確認してください。
梅毒はキスでも感染しますか?
口唇や口腔内に感染性の病変がある場合には、 キスなどの直接接触によって感染する可能性があります。
梅毒は無症状のこともありますか?
あります。梅毒では症状が認められない潜伏梅毒の時期があり、 症状がないことだけで感染を否定することはできません。
梅毒が心配な場合はどうすればよいですか?
感染機会があり心配な場合は検査で確認してください。 現在症状がある場合、パートナーが梅毒と診断された場合、 妊娠中または妊娠の可能性がある場合は、 医療機関への相談をおすすめします。
情報源
本ページは、公的機関が公表している情報をもとに、 一般の方向けに内容を整理しています。
内田 千秋 医師
日本性感染症学会認定医。 性感染症専門のあおぞらクリニック理事長。 性感染症の検査・治療に関する医学的知見にもとづき、 本ページを監修しています。








