梅毒について
病原体の名前は梅毒トレポネーマといいます。
梅毒トレポネーマは、低酸素状態でしか生存できません。また、低温や乾燥にも非常に弱いという性質があります。 このため、梅毒の感染経路は限定されており、主に感染している部位が皮膚や粘膜と直接接触することで感染します。
具体的には、膣性交やアナルセックス、オーラルセックスが主な感染経路です。また、病変部位が口にある場合は、キスでも感染することがあります。
感染後3〜6週間程度の潜伏期を経て、時間とともに様々な症状が現れます。感染後、一時的に症状が消失する時期があります。そのため、治癒したと思って医療機関を受診しない方が多く、治療の遅れに繋がるとされています。
世界中に広く分布している疾患です。ペニシリンによる治療に成功して以来、発生は激減しましたが、その後、各国で幾度かの再流行がみられています。 2016年の感染症発生動向調査によると、全国で4518人、都内だけで1673人の梅毒発生が報告されています。2017年は6月の中間報告で既に、都内2000人の発生が報告されているので注意が必要です。
患者数の推移
梅毒の平成11年~令和3年の年別報告数の推移と、報告数の年齢別分布をグラフにしたものです。
平成23年から急激に患者数が増えてきており、平成29年には実に44年ぶりに、5,000件を越える報告数となりました。
年齢別に見ると、男性は20〜50代、女性は20〜30代での感染が増加しています。
感染経路は、男性は平成21年以降、同性間性的接触が50%以上でしたが、平成27年以降は異性間性的接触の割合が増加。女性は異性間性的接触が50%以上を占めています。
また、病型別の患者報告数では、男性・女性ともに無症状病原体保有者(自覚症状がなく感染している)の割合が、20〜40%で推移している状況です。
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症状
第Ⅰ期梅毒
感染後、数時間で血液に乗り全身に回ります。約3週間経過すると、菌の侵入した場所で初期硬結と呼ばれる硬いしこりができます。やがてしこりは硬く盛り上がり、硬く盛り上がり中心に潰瘍ができます。これを硬性下疳と呼びます。
梅毒が原因できる下疳(性交によってできる伝染性の皮膚の潰瘍)は、一般的に痛みなどの自覚症状はないとされています。 しかし、下疳により弱くなった皮膚から細菌など侵入した場合、痛みや痒みといった症状がでる可能性もあるので注意が必要です。
その後、下疳ができた周囲のリンパ節が大きくなったり、痛みを伴ったりすることがあります。のどに感染した場合は、首のリンパ節が大きくなり、尿道や膣周囲に感染した場合、鼠径部のリンパ節が大きくなることがあります。
第Ⅱ期梅毒
全身の皮膚・粘膜の発疹や臓器梅毒の症状がみられるものを第Ⅱ期梅毒と言います。
第Ⅱ期でみられる発疹は多彩です。
a.丘疹性梅毒疹→感染後、3ヶ月程度で出現する発疹です。大きさは小豆大からエンドウ豆大で、赤みを帯びた結節様の発疹が出現します。
b.梅毒性乾癬→角層の厚い手掌・足底に生じた丘疹性梅毒疹で、赤みを帯びた発疹です。乾癬の症状に類似しています。手掌や足底に発疹が出現する可能性のある類似の病気があまりないことから、梅毒の典型症状として非常に有名な症状とされています。
c.梅毒性バラ疹→全身に目立たない淡紅色の発疹が出現します。第2期の最も早い時期にみられる症状で、自覚症状もなく数週で消退することもあり、見過ごされることが多いため注意が必要です。
d.扁平コンジローマ→性器や肛門周囲などに見られる平らな出来物です。低リスク型HPVに感染した時に出来る尖形コンジローマに似ているため、注意が必要となります。
e.梅毒性アンギーナ→キスやオーラルセックスが原因で、のど(咽頭)に感染した時に見られる症状です。のど(咽頭)に発赤や腫脹が出現します。蝶が羽を広げたような発赤や腫脹が見られるのが特徴的です。
f.梅毒性脱毛→虫喰い状の脱毛と例えられるように、頭髪がまばらになるのが特徴的です。
第Ⅲ期梅毒
感染後3年以上を経過すると、結節性梅毒疹や皮下組織にゴムのようなしこり(ゴム種)ができることがあります。現状、第3期梅毒まで経過する前に、梅毒が発見され治療される方がほとんどのため、現在ではほとんど見られません。
第Ⅳ期梅毒
感染してから10年から20年と時間をかけて症状として現れます。症状としては大動脈瘤破裂や、脳などの中枢神経を侵され、死に至ることがあります。 しかし、第3期梅毒と同様に現在、ここまで病気が進行することは非常に稀であると言われています。
感染経路
梅毒トレポネーマは、感染者の皮膚や粘膜、血液、体液に潜んでいます。避妊具を使用しない性行為だけでなく、キスだけでも感染するほどの強い感染能力があるとされています。
皮膚や粘膜の小さな傷から侵入することによって感染し、数時間後には血行に乗り全身にまわり、さまざまな症状を引き起こします。
血液を介して全身に感染が広がるという特性から、感染経路は性行為だけでなく、母子感染の危険性もあります。胎児が母体内で胎盤を通して感染したものを先天梅毒と呼びます。
潜伏期間
感染後3〜6週間程度の潜伏期を経て、時間とともに様々な症状が現れます。梅毒に感染後、一時的に症状が消失する時期があります。そのため、治癒したと思って医療機関を受診しない方が多く、治療開始の遅れに繋がるとされています。
感染してから約3週間後、梅毒トレポネーマが侵入した箇所の組織が硬くなったり(初期硬結)、欠損(潰瘍状の病変)がみられたりします。痛みを伴わないリンパ節の張りや腫れを伴うこともあります。
なお、この第Ⅰ期の症状は、特に治療をしなくても数週間程で消えてしまいます。そのために感染したことに気づくことが難しいとされています。第 I 期梅毒の症状が一旦消失した後、4〜10週間の潜伏期を経て、手のひらや足の裏を含む全身に、多彩な皮疹、粘膜疹、扁平コンジローマ、梅毒性脱毛などが出現します。
この時、全身に見たことがないような発疹が出現して、初めて皮膚科を受診し、梅毒だと判明するケースが多いようです。梅毒の治療は、早期に治療したほうがより治癒までの過程が短いとされていますので、陰茎や咽頭(のど)に潰瘍やしこりが認められたときには、積極的に検査をお受けください。
少しでも気になることがあれば、早めに検査を受けるようにしてください。